ロレックスはスマートフォンやパソコンなどと同じく機械なので、取り扱いには注意すべき点がいくつかある。基本的なことだが、知っているのと知らないのでは大きな違いがある。
はじめに
ロレックスを購入した後は適当に取り扱ってはいないだろうか。例えば拭き掃除。非常に簡単な作業だが、面倒だといってしない人も多い。また、時計を巻くのにも雑に扱っている人もいるだろう。逆に、大切にするあまり全く使わないという人もいるだろう。でも、それは間違いだ。
ロレックスは頑丈といわれるが、腕時計なのでむしろデリケートなもの。そのため、末永く使い続けるには、正しい取り扱い方法とメンテナンスが必要不可欠。
ここでは長い間使用できるだけでなく、きれいな状態を保つための取り扱い方法を掲載しているので参考にしてほしい。
保管方法
長期間使わないのは故障の原因に
ロレックスを大切に使いたい気持ちはわかるが、基本的には毎日使うことを前提に部品の耐久性などを考慮して製造されている。使用しなかったからといってさほど寿命に影響はないので、ロレックスは毎日活用したほうがいい。
むしろ使用しない期間が長いと機械油が凝固するなど、悪影響を与えることも。そうなると、リューズの操作不良、パワーリザーブの短縮、パーツ同士の磨耗などさまざまなトラブルをもたらす可能性が高い。
少なくとも1か月に1度はゼンマイを一杯まで巻いて24時間以上駆動させ、機械油を機構全体に循環させるようにしておこう。
もし長期間装着しないなら、ワインディングマシンで保管しておくと安心。
磁気を発生する製品に密着させて保管しない
磁気はロレックスにとって天敵。磁気は歯車の動きを速くしたり、逆方向に動かそうとしたりする。その結果、たとえば1時間に10分進む、といった極端なトラブルに至ってしまう。ロレックスを電子レンジなどの強い電波を出す家電のそばには近づけないよう注意。
ではどれぐらいの距離を磁力の発生するものから離すかだが、磁気は距離の2乗に反比例して弱くなるため、影響を与える範囲はそう広くない。磁気を発生する製品から5cm以上の距離を離していれば、ほとんど影響を受けることはない。
普通にパソコンやスマートフォンを扱う時でもロレックスは着用したままでいい。ただ、保管する時にパソコンやスマートフォンなど磁気を発生するものの上に置くのだけはやめておこう。
ちなみに万一、ムーブメントが帯電してしまった場合は時計店にもっていこう。磁気抜き専用の道具に通してもらえば磁気は簡単に除去できる。
著しい場合はムーブメントを分解したうえで磁気抜きをすれば、トラブルは解消できる。この場合は、修理業者に依頼することになる。
参考リンク ロレックスが動かなくなったら「磁気帯び」の可能性も
保管する場所にも注意、電磁波が発生する機械から距離をおき、湿気や埃の少ない場所に保管を
家の中には腕時計にとって危険なエリアが多々ある。テレビやスピーカーといった電磁波を発生させるものは、ムーブメントに影響を与えることがあるため、これらの近くに時計を置くのは禁物。
また、防虫剤に使われる樟脳(しょうのう)は文字盤に変色をもたらすので、タンスの奥などに保管する時は注意が必要。他にも当然ながら水場や火のそば、落としやすい場所には置かないように気をつけよう。
このような場所に保管するのはやめよう
飲み物の近く
万一ロレックスに飲み物をこぼしてしまった場合、コーヒーやお茶に含まれている鉄分には金属を腐食させる働きがあるので拭き取った後は修理業者に相談する。また、糖分もサビ浮きなどの原因となるので注意が必要だ。
スマートフォンや携帯電話のそば
スマートフォンや携帯電話、家電製品から出る電磁波がムーブメント内に帯磁すると、歯車の動きを早くさせるなど、極端な精度の狂いが生じるので特に気をつけたい。最も危険な場所が電子レンジ。強い電磁波を発生させるので注意しよう。
机の端
ロレックスは精密機械が詰まっているため衝撃に弱い。そのため落下の可能性が高い場所に置くのは禁物。自宅に動物がいる人は特に注意してほしい。
日のあたる場所
日光そのものよりも、ケース内に熱がこもることが問題になる。温度が上がりすぎると、ムーブ内に塗布されたオイルや文字盤の塗料の劣化も早めてしまう。
日々の使い方の注意
裏蓋の保護シールは剥がす
裏蓋の保護シールは、剥がさないまま使っている人もいるが、ロレックスを購入後すぐに剥がしておいたほうがいい。保護シールを付けたまま使い続けると、汗が保護シールと裏蓋の隙間に入り込み、そのまま水分が留まる可能性も。
水分が留まるということは、最悪の場合そこからサビが発生することも。あくまで保護シールの役割は時計が店頭に置いている間の保護だ。
また、保護シールが貼っていないからといって売却時の買取査定金額が下がるということもないので安心してほしい。むしろ、シールを貼ったままで錆が出ているとマイナス査定になってしまう。
クロノグラフは必要なときだけ動かす
基本的にクロノグラフは常時動かさないもの。必要なときだけ作動させることを前提に作られている。
長い間クロノグラフを動かし続けると、ムーブメント内にあるクロノグラフ機構に過度な負担がかかり、部品を激しく消耗させてしまう。
デイトナのメンテナンス費用は高いので、パーツを長持ちさせるためには、必要なときだけ使うようにしたほうがいい。
時計を振って自動巻きを行わない
しばらく使ってないと時計は止まったまま。だからといって時計を大きく振って巻き上げるのは間違い。激しい振動によりローター軸に大きな負荷がかかり、正しく回転しなくなる可能性があるからだ。
そもそも、時計を振ることによるゼンマイを巻き上げる力はリューズの巻きあげる力と比べて格段に低い。止まった自動巻きはリューズを使って巻き上げるほうがいい。
精度が悪化していなくてもオーバーホールを行う
オーバーホールは3年から5年に1回の間隔で実施しよう。この期間を越えると、内部の油が古くなり、油切れの状態になる可能性が高いためだ。もしそのまま使い続ければ、内部パーツの損傷などを引き起こす原因にもなるので注意しよう。
そして、いざ精度がおかしいとわかってからオーバーホールを行っても、故障部品などが多くなり、結果的に修理費が高くついてしまう。長い目で見ると、オーバーホールはこまめに出したほうが出費を抑えられる。
オーバーホールに関して詳しくは「オーバーホールとは」を参照のこと。
ゴルフの時は使わない
フルスイングしたクラブとゴルフボールがぶつかった瞬間は、約1トンの衝撃があるといわれている。その衝撃は手首にも伝わり、結果的に時計へショックを与えることになる。その衝撃は腕時計にとって、落下と同じようなショックなのだ。
某デジタル時計のように耐衝撃性に優れているモデルもあるが、それはあくまで不測のアクシデントに対応するため。
基本的に機械式時計は、激しい衝撃を受けるスポーツのために開発されたものではない。ゴルフだけでなく野球のバッティング、衝突の危険があるサッカーなど、ゲーム中に激しい衝撃を受けると、針が飛んだり、ムーブメントが負荷に耐えられずに破損したりする危険もある。
ディープシーであろうと、デイトナであろうと、ゴルフでロレックスを着用すべきではない。
リューズの取り扱いにも注意したい
リューズ関係は間違った使い方をしている人が多く、ムーブメントに悪影響を与えやすいため注意が必要。操作がわからなかったり、不安だったりする時は購入店に連絡し、店員さんから正しい操作方法を聞いてみるといい。
リューズを回転させるときはゆっくりと
リューズを一気に回転させたほうが、ゼンマイが巻き上がりやすいと思うかもしれない。しかし、一気に回転させる方法は、輪列機構も高速に回転させてしまい、結果として歯車の磨耗を促してしまう。
あまり神経質になる必要はないが、1秒で1回転ほどの速度でゆっくりと回転させるほうがいい。
日付は午後8時から午前4時の間を避けて切り替える
デイトジャストやサブマリーナデイトなど、早送り機構が付いているモデルで注意したいのは、午後8時から午前4時の間は日付の早送りをしてカレンダーを変えてはいけないということ。
この時間帯はカレンダーの円盤と送り車が噛み合っており、無理に動かそうとすると、それぞれの歯を破損する恐れがある。日付を早送りするときはこの時間を避けて操作しよう。
リューズを巻く時、2~3回に1回ほど空回しをする
リューズを巻くときに空回しを加えると、ゼンマイ切れを防ぐ効果がある。
方法はリューズを2~3回転させたら、空回しを1回。これを繰り返して徐々に巻き上げていく。
ちなみに、空回しはゼンマイの僅かなたわみやズレを直すことにも有効とされている。ただし、後述するがアンティークモデルやデイトナなどは普通に巻いたほうがいい。
1.リューズを12時方向にゆっくりと2~3回転させる。
2.逆方向にリューズを1回転。巻き上げとこの動作を交互に繰り返す。※アンティークモデルやデイトナは通常通りの巻き方がおすすめ
アンティーク時計は順方向のみに巻く
古い時計のムーブメントは分針を逆方向に回すと内部機構にダメージを与えてしまうことも。時刻調整するときは時計回りに動かすようにしよう。
最近のモデルでもデイトナなど複雑な機構を搭載している時計は、逆方向に巻いて時刻合わせしないほうが安全だ。
衝撃や振動に注意する
絶対に落下させない
万が一、落下させてしまうとガラスやケースにキズが付いたり、最悪の場合割れてしまったりと、さまざまなアクシデントが発生する可能性が高い。とくに、時計を腕にはめていない時は要注意。
時計に外傷がなくても、内部が破損してしまっていることも考えられる。
衝撃や振動はできるだけ避ける
時計の精度は、振動や衝撃などの影響を受けやすい。ロレックスは他の機械式腕時計と比べると衝撃に強い作りになっているが、強い衝撃は避けたほうが無難。ロレックスをつけたままキャッチボールやバレーボールをするのはやめよう。
衝撃を受けることによりテンプの振幅の幅が変化して、一時的に精度を乱す可能性もある。それが、あまりに大きな衝撃である場合はヒゲゼンマイの形状が変化し修理が必要になることも。
さらに、文字盤が地面と垂直になる状態(いわゆる立姿勢)で一定周期の振動を受けた場合は、大きな被害をこうむる。
まとめ
ロレックスは高級実用時計といわれるように、壊れにくいことが魅力のひとつ。しかし、繊細な機械式であることには変わりなく、自己流でのメンテナンスや取り扱いは確実にトラブルにつながる。上記で紹介した使い方を実践し、無用の故障とはおさらばしよう。