中古モデル・アンティークモデルの購入はコンディションの確認は必須。しかし、お店で気に入った時計を手元に出してもらったのはいいが、何をどう確認すればいいのかと悩む人も多いだろう。そこで素人でも可能な簡単なコンディション判別方法をここで紹介する。
はじめに
必ず現物を見てから時計のコンディションを確認したい
中古品の購入に際しては、とにかく現物を確認することが最も大切だ。商品の状態に対する表現と受け取り方は、店舗側と購入側とでは微妙に違うからだ。
そのため写真や電話だけで判断するのはやめておこう。新品ならまだしも、中古の場合はよほどそのお店に信頼を置いていない限りは避けたほうが無難だ。
購入する際には実際に店舗に出向いて店員さんに許可をもらってから、以下のポイントを参考に見るだけでなく手で触って確認してから購入しよう。
自分に合っているかが最も大切
気に入った時計があったら、店員さんから了解をもらい、腕に乗せてみることだ。そこで「すわりがいいか?」とか「自分の腕にあった大きさか?」「合わせたい服としっくりくるか?」などを確認する。
さらに、ブレスレットなら手首に試着してみよう。このときに自分がどう感じるかが大切だ。ただ、マナーとして革ベルトは試着は避けるべき。
文字盤
装飾の劣化や色あせた文字盤は避けよう
アンティークモデルの価値あるダイヤルの変色は例外として、文字盤の不具合があるものは時刻確認の妨げになるので避けたほうがいい。
文字盤は5年から十数年かけて変色し、劣化とともに読み取りにくくなっていく。ダイヤなどの宝石付きモデルの場合は、宝石が外れていないかも確認する。
オリジナルコンディションかどうか
文字盤については新しいものに交換したものよりも、多少の色あせなどがあっても、オリジナルコンディションがベスト。ケースに比べて文字盤がとくに真新しく見えたら文字盤を交換されたか、リダン(文字盤の再塗装)の可能性ありだ。
文字盤を再塗装されたものは、売却時の買取価格が大きく下がることもあり得るので注意したい。ただし、交換されたのがロレックスの正規文字盤オリジナルの状態にリダンされたものなら問題はない。
インデックス
夜光塗料の剥離が著しければ再塗装という手も
バーやドット、トライアングルのインデックスには夜光塗料が塗布されており、明るい時に帯光して暗部で光る。中古ロレックスはこの夜光が劣化して光らないことも。時計の周りを暗くして塗料部が発光するか確認しよう。
針
ちょうど12時で長針と短針が重なるか
リューズで針を動かし12時ちょうどに長針と短針が重なるかを確認。同様に6時ちょうどに長針と短針が一直線なるかも確認しこれを2~3回繰り返そう。針交換したものは一直線になりにくい。
針回しが重すぎたり軽すぎたりしていないか?
初心者でもわかるくらい重い、または軽いのは×。重い場合は一部の歯車の噛み合わせがずれている可能性が高く、最終的に時計自体が不作動に陥ることも。軽い場合は一部の歯車に緩みがある可能性が高く、必ず遅れるようになる。
夜光塗料の剥離が著しければ再塗装という手も
古いアンティークモデルでは、すでに蓄光力が失われているのが普通だ。夜光塗料が剥がれていることも多く、こうした場合も再塗装は可。ただし、針に極端なサビや腐食があると将来、針が外れることもあるので、購入時にはしっかりチェックを。
ケース
著しい傷は研磨で消してもらうことも可
初心者は「なるだけ傷のないものを」などと外見の状態を一番に気にする傾向があるが、基本的には小さな傷は研磨で無くすことができるのでアンティークモデルであっても新品同様の綺麗さのものが多い。
もちろん、古いものであってもアンティークや中古品なら多少の傷も魅力の一つ。しかし、致命的な傷の入ったケースは中古ロレックスといえども論外。購入は見送ったほうがいい。
また、裏蓋の縁や、ベゼルとケースの隙間などにサビが発生していたら、購入してはいけない。中のムーブメントもサビびついている可能性があるためだ。
研磨が何度も繰り返されていないか
研磨が何度も繰り返されたケースではエッジが丸みを帯びていたり、エンドピース穴がラグの中央よりもずれていたり、削られたぶん、その小穴の断面が楕円形になっていたりする。
新品時に比べて痩せてしまったケースの場合、一定数以上は研磨できない場合もあるため、本来はエッジの効いた部位が丸みを帯びていないか見定めること。
本体とのつなぎ目も確認
ロレックスの大半のモデルはオイスターケースになっており、スクリューロック式の裏ブタになっている。そのねじ込み箇所は溝になっていて水分やゴミが付着しやすく、清潔に保っていないとサビが発生する。故障の原因にもなるため、注意深く確認しよう。
回転ベゼル
回転ベゼルの傷の有無やきちんと回転するかチェック
サブマリーナやGMTなど回転ベゼル搭載モデルは、ベゼルの状態を確認することが重要。まずはベゼルに大きな傷がないかを確認しよう。
その後、スムーズに回るかどうかを確認。回した際に硬すぎるとか、緩すぎる、引っ掛かりがあるなどの場合、ベゼルのまわりに入っているバネが劣化していたり、サビが出たりしている可能性が大。これは修理が可能なので、ぜひ直してもらおう。
しかし、サビの場合はサビ落としをすることで防水機能の低下が懸念されるし、ベゼル裏の板バネの損傷が原因なら部品交換が必要となる。
昔のモデルはベゼル部分を特に注意したい
50年代のGMTマスターなどは、プラスチックを使用したベゼルを使っているので、経年劣化が原因でベゼルにヒビが入っていることがある。
他にもアルミ板にプリントしているものでは黒い部分が白っぽく変色していることがあるのだが、50年代以前のロレックスのパーツは入手困難であるため、パーツ交換はまずできない。
風防
あくまでも消耗品と心得るべし
アンティークでは風防に傷がないということはめったにない。しかしながら気になる傷は一応、購入前に修復してくれるように店員さんに申し出てみよう。容易に消せることもあるからだ。
なお、風防は消耗品としての位置づけなので新しいものに交換されていても、その時計の価値が下がることはない。
傷やヒビがあると交換が必要になる
1980年代から高硬度のサファイアクリスタルが主流となり、傷はほとんど付かなくなった。だが絶対に傷がつかないわけではない。
悪いものだと傷やヒビが入っていることもあり、そうなってくると視認性も防水性も保てない。純正品の交換だと3万円前後はかかるため、全面を入念に確認したい。
日付表示窓
デイトジャストなら0時の前後1分のズレは許容範囲
89年以前の針連動式は丈夫で、不具合があっても簡単に直せるのだが、89年以降の早送り機構が導入されたものは歯数が多いため、歯がスリップしやすいなど耐久性で劣る。
ちなみにデイトジャスト機構は午前0時ちょうどではなくとも、前後1分程度のズレは許容範囲とすべきだろう。
ラグ
ブレスレットを外してもらい、サビの有無をチェック
ステンレススチールの「ステンレス」は「サビびない」という意味で、水ではサビびないが、汗などの脂に長期間触れると髭(す)が入ったようにサビに侵されるのだ。
確認の際には裏蓋とケースの隙間はもちろん、ラグ内側の付け根も忘れずに注意したい。可能なら店員さんにお願いしてブレスを外してもらってチェックしたい。
ケースの角が極端に丸くなっていないか
ケースにサビが出た場合、それを消すために深くパフ研磨される。その結果、ケースの角が削れてしまう。
ラグも同様にバネ棒穴が楕円化するなどの傾向も。また、研磨できる回数は限られているため研磨が著しいと中古時計としての価値が下がってしまうので注意したい。
リューズ
ポジションごとに操作性をチェック
時計内部の動きに最も影響のあるパーツがリューズ。そのためこの部分の確認は非常に重要。店員さんの了解をとり、リューズが各ポジションを円滑に操作できるかどうかを確認したい。
時刻や日付の調整、ゼンマイはきちんと巻けるか、ねじ込みロックの機能など、ポジションごとに動かしてみることで状態をチェックできる。
ちなみに、簡単な扱い方として以下の3点だけでも覚えておくといい。
- 1.手前に回してロックを解除するとゼンマイ巻きのポジション。
- 2.カレンダー付きなら、そこから1段引けばカレンダー合わせのポジション。
- 3.さらに引くと時刻合わせのポジション。
回しやすいか・ネジ込みやすいかもチェック
リューズが硬くて回しにくい、ぐらついている、根元までねじ込めないといった状態なら要注意。
普段使用する際には回したり、引っ張ったり、押し込んだりとリューズにはこれらの力が頻繁に加えられるため、摩耗もしやすいし、何らかの不具合も発生しやすい。それだけに購入前のチェックは必須だ。
硬くて回しにくい場合 | 固くて回しにくいというときはオイルを差せば直る場合と、歯車のかみ合わせに問題がある場合とが考えられるが、後者は修理代が高額。 |
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グラつきを感じた場合 | ねじ込み式リューズを操作して指先にグラつきが感じられたら要確認。ねじ山の摩耗でねじ込みが浅くなり、防水・防塵機能が損なわれていることが多々ある。ねじ込み始めから完全に締め込まれるまでが1周に満たない場合は、修理を頼んでみよう。
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ねじ込みが浅い場合 | リューズを巻き込んでいるチューブの窪みが摩耗していると、ねじ込みが浅くなる。この場合はチューブ交換だけで済むので、購入前に店員さんに交換してもらえるかどうかを確認しよう。
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プッシュボタン
グラつきや妙な引っかかりはないか
デイトナやヨットマスターⅡは、クロノグラフやカウントダウンを操つるプッシュボタンを持つ。確認の際はプッシュボタンを実際に押して感触を確認しよう。感触に妙な引っ掛かりがないか、あるいはグラついていないかを確認し、あったら修理を頼んでみよう。
ボタン自体が原因の場合は、スプリングを交換するか、オイルを差すなどで直ることもあるが、ムーブメントに原因があるとなるとオーバーホールが必要になってしまう。
こうしたボタン操作は必ず店員さんの了解を得てから行うこと。また、2~3回程度の操作に留めること。
ゼロ戻りでインダイヤルの針が同時リセットするか
デイトナの場合はクロノグラフの確認も忘れずに。不具合なら調整が必要になる。
- クロノグラフを1分間動かし、30分計の動きをチェック。
- ストップ後、リターン用プッシュボタンを押し、瞬時にクロノグラフ秒針が0に戻るか
- 30分計の針も同時に0に戻るかを確認。
ムーブメント
30分間で1分以上の進み・遅れがあったら×
実際の確認方法としては、あらかじめ高精度のクォーツ時計を持参して計測する。もちろん、スマートフォンのストップウォッチアプリを使ってもいい。
購入したい1本が決まったら店員さんに断ったうえで巻き上げ、その時計と持参の時計を秒単位で比較。ちょうど30分後に再確認し、1分でもずれていたら購入は控えよう。
とはいえ、30分もかけて時計内部を確認するのは現実的ではないため、精度は店員さんを信用して確認したほうがいい。差-4秒~+6秒ならば、新品と変わらないクロノメーター級だ。
振ってみてもわからない
軽く左右に振って、時計を耳に当ててムーブの音を聞き、そのコンディションを探ろうとする人もいるが、はっきりいって音でコンディションを聞き分けるのは素人では不可能。知ったかぶりに見えて、むしろ恥ずかしいので、これはやらないように。
判断は直近のオーバーホール履歴などを参考にしよう。中古モデルなので経年劣化によるパーツの摩耗やオイル切れは避けられないため、直近にオーバーホールが済んでいる中古品が望ましい。
ブレスレット
長く使い続けると剛性がなくなっていく
3連のオイスターブレス、5連のジュビリーブレスともに高級感があり、抜群の装着感がある。さらには耐久力も高い優れたブレスレットがロレックスの強み。ただし、劣化しないとか、壊れないとか、メンテナンスが不要かといえばそうではなく、長く使い続けると剛性がなくなっていく。
軽く引っ張って、部分的ダメージを確認
検討の際はショーケースから外してもらい、ブレスを軽く引っ張ってみるといい。部分的にヨレが感じられる箇所があれば、それは何らかの不具合がある可能性がある。これが原因で装着時に違和感があるなら、購入前に修理可能かどうか確認しておこう。
クラスプの噛み合わせは良好かを確認
クラスプとはブレスレットのバックルのこと。
三つ折り式バックルの場合、爪掛けが外れる原因として中板と下板の各々のカーブが一致せず、両横が反発し合って外れたり、爪掛けとそれが噛みつく接続ピンとの噛み合わせがずれていることが考えられる。
時計専門店であればこのような場合であってもその場で調整してもらえることが多い。
クラスプは手首裏のセンターに来るか
手首の裏を見た時に、クラスプがその手首の中央に来ていなければ、12時側と6時側のそれぞれのコマ数が不適切な状態。
この状態では装着時に違和感が出てくるだけでなく、クラスプ自体に余分な負荷がかかり、爪掛けが外れやすくなるなどの原因に。購入時には店員さんに依頼してしっかりコマの調整してもらおう。
保証書・その他付属品
購入時に必ず内容のチェックを
メーカー保証はとうに過ぎているアンティークでは、店舗発行の保証書が重要。購入時、保証書に目をとおし、疑問点を質問するなどして保証期間や保証内容などを確認しておこう。
国際保証書やボックスなどの付属品も一式セットになっているものがいい
ほとんどの中古ロレックスは新品同様に、付属品もすべて揃えて販売している。日常使いには不必要と感じるかもしれないが、売却する際はこれらの有無によって買取査定額に差が出るため、国際保証書やボックスなど全て揃っているものが良い。
もちろん、購入後は使わないものであってもきちんと保管しておくことをお薦めする。とくにブレスレット調整で余ったコマは無くしがちだ。
本体以外のチェックポイント
メンテナンス履歴
メンテナンスがサれていない場合はすぐにオーバーホールが必要になることも
時計本体のチェックではないが、メンテナンス履歴をチェックすることは非常に重要。
ロレックスは3年~5年ごとのオーバーホールが推奨されているが、十数年オーバーホールを行っていない中古品だと、購入してすぐにオーバーホールが必要になるかもしれない。また、その間オーバーホールを行っていないのであれば時計内部に不具合が発生している可能性も十分に考えられる。
優良店であればそこまで心配する必要はない
ただ、優良店であれば中古品を買取った際には必ずオーバーホールなどの内部メンテナンスを行っているのでこのような心配は不要。
一方で、ヤフーオークションや普通の店舗で中古ロレックスを購入する際にはこのメンテナンス履歴はしっかりと確認しておきたい。
保護フィルム
新品と中古を左右する決定的な目安
中古品やアンティークモデルであればこの部分は考えなくてもいいが、一応。ケース部分の薄い透明の保護フィルムは、流通段階でケースに傷が付かないように施されているもので、すべての新品に付いているものだ。
保護フイルムが付いていないモデルは、以前の所有者が使用の際に剥がしたためであり、こうなってしまうと中古品として位置づけられる。このように、この保護フィルムが付いていないものは新品とは見なされない。
つまり、たとえ新品であっても保護フィルムが付いていないと、アウトレット品扱いとなってしまい、値引きして販売されることになるというわけだ。
まとめ
最後に内部確認のお願いをしてみよう
実際に欲しい1本が決まったら、側開け(裏蓋開け)を頼んでみよう。その店舗の方針で断るところもあるが、「本気で買うつもり」という意志が伝われば、快く開けてくれるお店もある。もちろん、ケース内にホコリが入るからなどの理由で開けてくれないところの方が多いので断られても不快に思ってはいけない。
側開けしてもらえたら、裏蓋とケースが互いに接する部分のサビを確認し、サビがあったらサビを落としてもらえるか確認してみよう。また、その際に、パッキンは交換済かどうかも聞いておこう。
最後に
ここまで行えばもう大丈夫だ。安心して中古モデルやアンティークモデルを購入できる。
逆にここまで確認するのが面倒ならば、よほど信頼できるお店を探すか保証が手厚いお店を探すしかない。小さなお店でも優良店は多々ある。それも探すのが面倒であれば新品購入を検討しよう。