ゼンマイはロレックスを動かすために絶対に必要なパーツ。正しい巻き方を覚えることで、ロレックスの故障を防ぐことができる。同様に時刻や日付合わせも正しい方法が存在する。こちらも簡単なことなのでぜひとも覚えておきたい。
時刻/日付け合わせの前にリューズの位置について知っておこう
リューズを操作することで時刻や日付を調整できる。ここではリューズの位置について基本的なことを抑えておこう。
なお、日付表示のあるデイトモデルと日付表示のないノンデイトモデルでは、リューズ位置の設定が異なる。
ねじ込み式であることや手動でのゼンマイ巻き上げなど、基本的な動作はデイト付きと同じだが、ノンデイトモデルのほうがリューズを引くポジションがひとつ少ない。
通常のリューズ位置
通常はねじ込み式リューズがしっかりと閉まっている状態。
ロレックスの大発明であるねじ込み式の形状によって、ケースとの間に隙間がなく、ピッタリと密着するため、水や埃が時計内部に侵入することを防いでいる。
開放状態
反時計回りにリューズを数回回すと、ロックが外れて開放状態になる。ゼンマイの手動巻き上げはこの位置で行う。
一段引き状態
開放状態になるとリューズを外方向へ引くことができるようになる。
ノンデイトモデルの場合は、一段引きの状態でハック機能が効いて秒針が停止する。この状態でリューズを動かしてして時刻の調整ができる。
デイト付きモデルの場合は、解放状態からリューズを一段階引いたところが日付を調整できるポジションとなる。
二段引き状態
デイト付きモデルの場合は、さらにもう一段リューズを引き出し、解放状態からニ段引きの状態にすることができる。
この二段引きの状態ではハック機能が効き、秒針が止まり、時刻調整を行うことができる。
ゼンマイを切らない安全なゼンマイの巻き上げ方
まずは基本的なゼンマイの巻き上げ方を紹介する。
ロレックスの時計はゼンマイが巻いた状態から解ける力を使って動いているので、時計を動かす基本でもある。
なお、最近のモデルは手を動かすだけで自動的にゼンマイが巻き上げられる自動巻きに加えて、72時間のパワーリザーブなどの機能により、わざわざゼンマイを巻かなくても良い場合が多い。
そのため、毎日のように使用する場合は、この巻き上げはそこまで行うこともないかもしれない。
1.リューズを開放
リューズを反時計回りに回して防水ロックを解除し、開放状態にする。
2.時計回りに巻き上げ
リューズの刻みを親指と人差し指でつまみ、そのままリューズを時針回りで1回転させる。
3.反時計回りに巻き上げ
リューズをもつ指を離さずに、リューズを手前(反時計回り)に1回転分戻す(逆回しがゼンマイ切れを防ぐ役目)。この2・3の動作を20~30回繰り返す。
4.リューズをねじ込んでロックする(ゼンマイを巻くだけの場合)
ゼンマイが十分に巻き上がったら、最初の状態と同じようにリューズをしっかりとねじ込み、防水ロックを効かせる。ここでのポイントはねじ込み式リューズをきちんと締めること。
緩んでいると緩んでいる部分から水やホコリが侵入して故障の原因になる。
時刻のあわせ方
ゼンマイの巻き上げに比べると行うことの多い操作が時刻合わせ。普通の時計に比べるとリューズの開放や引き方など若干クセがあるので基本をしっかりと覚えておきたい。
1.リューズを開放
まずはリューズをゆるめて防水ロックを開放。内部に埃や水分が入ると故障のもとになるので、水分の多いところや、埃の多いところでの作業はやめておくのが無難。
2.リューズを引く
開放できたらリューズを引いて秒針をやめる。秒針が12時位置にきたタイミングでリューズを引くと、その位置で止まるので、時報などにあわせてより正確な調整ができる。
ノンデイトモデルは、リューズを引くのは1度でOK。デイトモデルの場合、時刻調整のポジションはもう一度リューズを引く「ニ段引き」をする必要がある。
ただし、一気に引き出すのはNG。まずは一段引きにし、そこからもう一段引く。
3.時刻を調整
リューズを反時計回りに動かすと短針・長針が時計回りに動くので、時刻を現在時刻にあわせる。なお、デイト付きの場合は時間を進めることによってデイト表示が変わるが、短針2回転で1日分となる。
そのため、午前/午後を意識してあわせることが大切。
4.リューズを押して戻す
リューズを押し込むと、ハック機構が解除されて秒針・短針・長針が動き出す。これで時刻合わせは終了。
デイトモデルはこの状態ではまだリューズが完全に締まったわけではないので(二段引きなので)、さらにリューズを一段押し込むことが必要。
5.リューズをねじ込んで完了
防水・防埃のためのねじ込みを忘れずに行う。
日付のあわせ方
デイトモデルの場合、日付の調整もリューズで行う。ポイントは2回転で1日分の日付が変わるということ。その点に注意して調整したい。
1.リューズの開放
デイト合わせもねじ込み式リューズを開放することから始まる。無理な力を加えないようゆっくりと丁寧に行う。
2.一旦リューズを二段引き状態にして午前/午後を確認
表示時間の午前/午後を確認してから行えば、昼間に日付が変わるというトラブルを防げる。まずはリューズの二段引きを行い時刻調整位置にする。
リューズを反時計回りに回して針を時計周りに進めて12時を過ぎたところでデイトが変われば午前、変わらなければ午後と判断。午前午後もあわせた適切な現在時刻に調整すること。
3.リューズを一段引きにして日付を変更
リューズを押し込んで一段戻し、ロック解放状態から一段引きのポジションにする。この位置でデイトの調整を行う。
リューズを丁寧に回し、日付を一日ずつ送ってゆく。目的の日付が出たら、表示窓とのズレがないかをしっかりと確認する。
4.リューズを戻す
デイト変更が終わったら、リューズを押し込んで開放ポジションに戻し、最後までしっかりとねじ込んで締める。
長くロレックスを使い続けるためのポイント
ゼンマイは巻きすぎると壊れる
ロレックスのゼンマイはパラクロムヒゲゼンマイというロレックスが独自に開発したゼンマイで、一般的な機械式時計に使われるゼンマイものよりも耐磁性、温度耐性、防錆性が高いという特徴がある。
ただ、それでも力をかけすぎるとロレックスでもゼンマイは切れてしまうので注意が必要。
具体的にはリューズが十分に巻き上がると、それ以上巻き上げられないような感触になる。そうなったら力任せに回さないこと。
ちなみに、自動巻きのモデルは、人の動きによってローターが回転することで巻き上げられる。そのため、巻き上げすぎるのを防止する装置が搭載されている。
1日に何度も手巻きを行わない
自動巻きのモデルであれば装着していればそのうち動くようになるが、ロレックスの多くのモデルは手巻きも可能。軽く手で巻き上げたうえで腕に装着するといい。
ただし、1日に何度も手巻きをするのはやめておこう。常時ゼンマイが小さく絞り込まれた状態になるため、強い力がかかってしまうと、ゼンマイが切れてしまうことがある。そのため、手巻きでゼンマイを巻くのは1日1回に押さえておくこと。
巻く時間は夜を避け、毎朝1回だけがいい(理由は後述)。
時刻合わせは針を反時計回りさせない
エクスプローラーⅠのようなシンプルな3針モデルなら、時刻合わせの際に針を反時計回りさせてもほぼ大丈夫。
ただし、時計は本来時計回りに動くように設計されているので、時刻合わせは針をなるべく進行方向に動かしたほうが故障の危険が少ない。
特にアンティークロレックスなど、非常に古いモデルは控えたほうが賢明。というのも、古いモデルは時計の針が正回転することのみを想定して設計されているモデルもあるからだ
また、アンティークは長年使用されているものなので、内部構造が劣化している場合もあるので、時計回りで針を動かしたほうが無難。
日付表示が翌日へと動き出す時間帯に注意を
日付表示は通常、午後8時頃から深夜2時にかけての間にゆっくりと翌日へと動いていくため、この間に時刻あわせや日付け合わせを行うとムーブメントに余分な負荷がかかり、日付表示がずれて表示されるなどのトラブルを生じやすい。
では、デイトジャストのように深夜0時に瞬時に日付が変わるのだから作業を行ってはいけない時間帯がないのかといえば、そうではなく、デイトジャストも午後11時頃から深夜0時過ぎまでの時間帯は日付を調整するのは避けたほうがいい。
じつは日付が変わる少し前から早送りのギアが動き出しているので、この間に変更が加わると、そのギアに無理がかかる。このタブーの時間帯に時刻や日付を調整したことが原因で起こる故障は、結構多い。
もし、このようなトラブルで修理に出すと、最も簡単な修理で済んだ場合の一般的な費用は5000円~。