日本ロレックスでの修理やオーバーホールは、正規販売店で買ったものでなくても並行品や海外で買ったものであっても受け付けてくれる。ただし例外もある。ここでは正規販売店でオーバーホールや修理を断られるケースを紹介する。
はじめに
例えばフランクミュラーなどのメーカーは正規販売店で購入したものでないと、正規店のオーバーホールや修理を受け付けてくれないが、ロレックスは並行品や海外で購入したとしてもオーバーホールや修理はロレックス正規店が受け付けてくれる。そのため、海外や並行品を販売しているところなどでも気軽に購入できるのはうれしいポイントなのだ。
ただしそんなロレックスでも、ロレックス正規店では一部のモデルのオーバーホールや修理を断っているので注意したい。
とはいえ、普通に購入したモデルであればほぼ大丈夫。断られるケースはほんの一部だが知識として知っておきたい。
例えば1988年以前のデイトナはオーバーホール受付拒否
1988年まで製造されていた第三世代までのデイトナは手巻きタイプであり、現状のような自動巻きタイプではない。もちろん現在は製造されておらず、多くの店舗でヴィンテージモデル扱いになっている。
現在のデイトナとは一味異なるデザインなので魅力的に映るかもしれないが大きな注意点がある。この手巻きデイトナは、ロレックス正規店でオーバーホールや修理を依頼したとしても断られてしまうのだ。
理由は修理部品の在庫不足
1965年頃から1988年にデイトナに使われたムーブメントは手巻きムーブメントの傑作といわれるCal.727。このムーブメントは20年以上もデイトナを支えてきたが、生産終了から25年以上が経過しているので、修理部品の在庫が切れてしまっている。
日本国内はもちろん世界的に在庫が希少で、スイスにあるロレックス本社に注文したとしても修理パーツは入ってこない。そしてロレックス正規店は正規パーツでしか修理を行わないため、修理ができないわけだ。
修理部品の在庫がないパーツを使用しているモデルは受付不可
中古ロレックスは注意が必要
部品の在庫が切れている、切れかけているものは他にもある。超ヴィンテージモデルのパーツはもちろんそうだが、中古ロレックスを取り扱っている店舗でたまに見ることができるモデルの中でも該当するものはちらほら。
先に紹介したCal.727も含め、例えば1980年代まで生産されていた下の4つの代表的キャリバーは、もう純正の修理部品在庫がほぼない。
見積もりはしてもらえたとしても拒否されることも
たとえ見積もりは受けてもらえたとして、部品交換の必要があるかどうか、それがどのパーツか、などによって、パーツがなければオーバーホールや修理ができない可能性も高い。
そのため、結果的に断られるということになる。中古ロレックスを購入しようとする際は、そのモデルがロレックス正規店でオーバーホールや修理ができるかどうか知っておくといいだろう。
もちろん、ロレックス正規店に依頼せずに普通の修理業者に依頼するのであれば受け付けてくれる可能性が高い。
日本ロレックスに断られるムーブメントの一部
ムーブメント | モデル | 製造年月日 |
---|---|---|
Cal.727 | デイトナ Ref.6263 Ref.6265 | 1963-1988年 |
Cal.1580 | ミルガウス Ref.1019 | 1960-2006年 |
Cal.1560 | サブマリーナ Ref.5512 エクスプローラーⅠ Ref.1016 |
1959-1963年 1963-1972年 |
Cal.1530 | サブマリーナ Ref.5513 | 1964-1965年 |
その他の断られるケース
断られるケース1:部品交換を拒否した場合
ロレックス正規店は機能性を元通りにすることを基本にしている
ロレックス正規店は機能性を元通りにすることをオーバーホールの指針としている。そのため、文字盤や針なども劣化していると、消耗品として交換されることがある。
現在市場に出回っていない珍しいモデルであっても、内部のパーツが劣化している場合は交換されてしまうが、この珍しいパーツに高い価値が付いていることが多く、交換されると大幅に価値が落ちてしまうのだ。
一部だけの部品交換拒否の場合は断れる場合も
たとえば、アンティーク品で文字盤だけで50万の価格がついているものもあるが、夜光インデックスが発光しなければ劣化した文字盤だと判断され、交換になる。
しかも、交換した古い文字盤や針、風防、リューズなどは通常、返却してもらえない。このようなことを防ぐためにも、必ず見積もり内容を確認しよう。ただ、部品交換を拒否した場合、オーバーホール自体をロレックス正規店に断られることもある。
断られるケース2:改造品
日本ロレックスは改造品のオーバーホールや修理を受け付けていない
改造品の定義は、文字盤や針、ベゼル、風防などの部品のどれか一つでもロレックスの純正パーツではないものに交換したものを指す。
安いからといって正規店でない業者に修理を依頼し、純正パーツ以外のものに交換されてしまうと、その後のオーバーホールや修理時にロレックス正規店に改造品とみなされ、ロレックス正規店ではオーバーホールや修理を受け付けてもらえなくなる。
もし改造品を修理依頼したならば、内部などを確認したうえで修理不能のため返却されることに。この場合は日本ロレックス以外の修理業者に依頼することになる。
中古ロレックスも同様
基本は中古のロレックスであっても正規店はオーバーホールや修理を受け付けてくれるが、改造しているのであれば話は別。特に中古品であれば前の持ち主がどのように扱っていたかは知りづらい。
もし正規店でのみオーバーホール依頼をするのであれば、中古品を購入の際は、以前の部品交換状態について知っておきたい。
ただし、必ずしも正規店に依頼する必要はない。価格を抑える目的で中古品を買ったのであれば、普通の修理業者でも十分かと。
断られるケース3:偽物
「故障した場合の自己解決方法」で紹介しているように偽物のロレックスは修理してもらえない。
たまに偽物と知らずにユーザーが日本ロレックスヘ持ち込むこともあるようだが、"偽物は修理できない"とはっきり突き返されるのだ。
断られるケース4:研磨しすぎたモデル
オーバーホール時に研磨も依頼すれば新品のようにきれいになって返ってくるが・・・
ロレックスが発明したオイスターケースは、肉厚で強度が強く水などの時計の大敵を防ぐことができ、腕時計の実用性を大きく高めている。 ロレックスが市場から大きな支持を受けたのはその防水機能に負うところが大きい。
このオイスターケースは通常使っていると細かい傷が入ったりするが、オーバーホール時に研磨も依頼すれば、新品のようになって返ってくる。
研磨しすぎたモデルは本来の防水性が確保できなくなってしまうのでそれ以上の研磨はNG
しかし、さすがの肉厚ケースでも、無制限に研磨できるわけではない。傷の深さにもよるが、一般的に研磨可能な回数の目安は5回といわれている。
研磨状態によるが、おおよそ5回以上研磨すると、肉厚だったケースが薄くなりすぎて、本来の防水性が確保できなくなってしまう。
そうなると日本ロレックスでは研磨を受け付けてくれない可能性が高い。もちろん、研磨をしないのであれば受け付けてくれることも。
まとめ
以上のようなケースでロレックス正規店でのオーバーホールや修理を断られることがある。もちろん状況にもよるので、どうしてもという場合は実際に聞いてみるといい。
「オーバーホールや修理はどんなところに依頼したらよいか」でも記載しているが、正規店と一般の修理業者の差の感じ方は人それぞれ。もちろん、一般の修理業者でも低価格で正規店に近い品質を誇る店舗もある。
オーバーホールは必ずしも正規店で実施しないといけないわけでないので、その辺は安心してほしい。
参考リンク オーバーホールや修理はどんなところに依頼したらよいか
日本ロレックス以外の選択肢も
日本ロレックスに断られても修理業者によっては受け付けてくれる場合も。業者によってはもう生産されていない純正パーツを在庫として確保していることも。
ただし、部品在庫はいつ切れるかわからないので、ヴィンテージロレックスを購入する際は、その後の修理などができるかどうか確認したうえで購入しよう。