ロレックスの多くのモデルが何十年も基本デザインを踏襲しているが、そのデザインを形作っている素材は常に進化し続けている。この積み重ねがロレックスを実用時計でありながらも高級ブランドのトップとして位置づける要因ともなっている。
現在の腕時計は実用性にもコストパフォーマンスにも優れたステンレスが基本
実用品として男性用の時計が誕生する以前、腕時計は女性用の装飾品だった。その名残もあって、現在でもゴールドをケースに使用する腕時計は多い。
ただ、日本ではゴールドの派手な色味が敬遠されがちで、ホワイトゴールドや赤みの強いピンクゴールド人気が高い。白系の色ならプラチナという素材もあるが、ゴールドよりも希少性が高く高価。反対にコストパフォーマンスに優れるのがステンレススチールだ。
以前の腕時計のケースといえばゴールドかスチールというのが相場だったが、加工の難しいステンレススチールなどの素材も今では難なく扱うことができるので時計ケースとしての主流となっている。
素材の種類
ロレックスは高品質の素材のみを厳選して使用している。スポーツモデルのケースは耐蝕性の高い(サビが発生しにくい)最高級ステンレススチールを使用。デイトナやドレス系のモデルにはゴールドやプラチナのモデルもある。なお高級シリーズのデイデイト40は外装にステンレススチールを用いず、ゴールド系やプラチナモデルのみラインナップ。
素材 | 特徴 |
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ステンレススチール(SS) | ステンレスとは錆びないという意味。スチールに約10%のクロムを配合して錆びにくい性質を作り出した。もっとも普及しているケース素材。 |
イエローゴールド(YG) | 75%の金に銀と銅を25%配合した合金のこと。ピンクゴールドに比べて明るい色合いが特長で、もっともポピュラーなゴールドとして人気がある。 |
ピンクゴールド(PG)・エバーローズ(ERG) | 75%の金に、やや多めの銅と少なめの銀を配合することで生み出される赤みがかったゴールド。ブラック文字盤との相性は抜群。なお、ロレックスが開発して自社鋳造するピンクゴールドをエバーローズと呼ぶ。このエバーローズは金にプラチナを配合して加えることにより、独自の色合いを実現している。 |
ホワイトゴールド(WG) | 75%の金に銅や亜鉛などのニッケル系と銀などのパラジウム形金属を配合した合金。配合によってはプラチナと見間違う色合いも生まれる。 |
プラチナ(PG) | 単体で白い光沢を放つ金属。科学的に安定しているため錆びに強く、古代エジプト時代にも装飾品に使われていた。もっとも高価な金属でもある。 |
ロレックスの外装素材を支えるのはその高い技術力
時計のデザインは変わらなくてもその素材は常に改良が行われている
最強の実用時計と称されるロレックス。その背景には前提として、時計そのものが高い完成度を持つということがある。特にその外装は実用性を大きく高める要因の一つだ。
ロレックスはサブマリーナやエクスプローラーなどここ数十年、ほとんどのコレクションの基本デザインを大きく変えていない。あるとするとベゼルの色や針の色などだ。その一方で使用している素材は度重なる改良が加えられ、進化を続けている。
外装部品も自社で製造できるので細かい改良を積み重ねることができる
ロレックスは他の高級腕時計ブランドと異なり、外装部品を自社で製造・加工できる数少ないブランド。そのため、外装部品については細かな改良を積み重ねており、ロレックスほどマイナーチェンジを行う時計ブランドはそう多くない。長年洗練され続けたデザインをもとに、そこからさらに改良を加え続けているので、ロレックスの外装面での評価は全体的に高い。
さらにロレックスはスイス最大規模のゴールド加工メーカーでもあり、腕時計ブランドの中でも合金を内製できる数少ないブランド。2007年頃にはエバーローズゴールドと呼ばれる合金を開発し、特許を取得。これは18金ピンクゴールドにプラチナを配合することで独特の色合いを実現し、さらに経年による退色を防ぐ効果を持っている。
出典 楽天市場
使っている素材は常に進化
優れた加工技術が必要な904Lスチールを採用
1926年に開発されたロレックスの3大発明のひとつはオイスターケースだが、ロレックスのオイスターケースやブレスレットに採用されている素材は、1985年以降904Lスチールと呼ばれる合金を使用している。この素材は一般的なステンレススチールに比べて貴金属に匹敵する耐蝕性と堅牢性、耐久性に優れている素材。
この904Lスチールは研磨することで美しい光沢を生み出すという特性もあり、オーバーホールなどで研磨を繰り返しても美しく、形状を保ちやすいメリットがある。
メリットが多い904Lスチールだが、非常に加工が難しく優れた技術が必要となる。そのためこの904Lスチールを用いているのは主に科学産業分野で、時計ブランドで採用しているのは高い加工技術力を持つロレックスのみとなる。
ベゼルはセラミックを採用
サブマリーナなどには時間を測定するためにベゼルを採用している。このベゼルには近年までステンレススチールを使ったものがほとんどだったが、ベゼルは日常使いで1番にぶつけることが多く傷をつけやすい部分に位置するため、非常に高性能のステンレススチールであっても傷つきやすいという弱点があった。
ロレックスは2010年に発表されたサブマリーナよりベゼルにブラックセラクロムという素材を採用した。このブラックセラクロムは極めて硬質な素材で、耐蝕性と耐傷性に優れ、さらに紫外線による影響も受けにくいという特性を持つ。そのためスポーツモデルに最適な素材であった。
出典 楽天市場
これにより頑丈というロレックスの個性をさらに高めたうえに、傷がつきにくく見た目の使用感も出にくくなり、新たな魅力を引き出したという意味でも大きな評価を得ている。
またこのセラミック素材は独特なツヤ感を放つ質感も大きな特徴。これまで実用一辺倒で屈強な印象が強かったロレックスのスポーツモデルは、このセラミックベゼルを用いることで高級感ある雰囲気も得た。